道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

象嵌の器

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福井の作り手・土本訓寛さんについては、かなり前の記事 で紹介したことがありますが、現在開催中の展示「北陸ノ手工藝」のために再び作品を制作してもらっています。

前回 は焼締作品をご紹介しましたが、今回展示しているのは、妻・久美子さんとの合作の『象嵌(ぞうがん)の器』。
象嵌』というのは、本体の表面を彫って紋様を施し、その凹んだ部分に別の素材を埋め込んでゆく装飾技法のこと。土本さんの場合は、赤土を彫って白い化粧土を埋め込んでいます。
もともと古い時代の朝鮮半島で『粉青沙器』と呼ばれていた器の加飾パターンのひとつで、日本では『三島』と呼ばれてきた古い手わざです。それゆえに、どこかいにしえの風情を醸し出しているのが、この技法の器の特徴だと言えるかもしれません。

本家・朝鮮の古陶磁では水鳥の絵柄などが多く見られますが、土本夫妻はそういったいにしえのモチーフも取り入れつつ、小さなものを愛する日本的な情緒や、ポップな現代感覚を加味した作品を制作。越前の土の特色を活かした土本さんならではの造型感覚が存分に活かされていて、単なる古陶磁の模写には終わらせない気概が感じられます。
徳利、片口、盃など酒器のほか、飯碗や豆皿など日常の食卓で多く使われる作品も届いていますので、ぜひこの機会に展示「北陸ノ手工藝」をご覧いただければ、と思います。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp
北陸ノ手工藝 3/17-31 http://www.room-j.jp/gallery/2017/03/317.php