道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

小石原から

明後日9/15から始まるのが、企画展「いま伝えたい九州の手仕事」。この展示に関する相談と常設用の発注を兼ね、福岡県の小石原(東峰村)を訪ねたのは、4月のこと。 そのあと、7月に大豪雨による土砂災害があり、大分との県境にある小石原を含む一帯は酷い被…

当たり前のこと

素敵な器が好きな僕ですが、そこにはちょっとした枕詞が付きます。正確に言うならば、「『日々使える』素敵な器」が好きなのです。 作家ものや骨董でものすごく素敵な器を見つけると、確かに所有欲は喚起されますが、手に入れたとしても、結局使わなくなって…

瑠璃とカレー

もともとカレー屋さん巡りが好きな僕ですが、夏は料理を作る気力が萎えてしまうため、家でもカレー。それも、簡単に作れるので、もっぱらドライかキーマです。 そんなわけで、画像のごとく、この日もキーマカレー。瑠璃釉の八寸皿に盛ってみました。15年以上…

福井再訪 3

昨日の記事 では、福井の作り手・土本訓寛さんが制作する焼締の器の話をしましたが、今日は、象嵌の器について。訓寛さんが成型を担当し、そのあと久美子さんが加飾して完成する器たちの話です。 ずっと前の記事 で、ふたりで作る象嵌の徳利とぐい呑みの画像…

福井再訪 2

昨日の記事 の続き。土本さん夫妻の作品というと、かわいらしい絵柄の象嵌作品が思い浮かびますが、夫・訓寛さんは、個人作家として焼締の器を制作。地元で掘られた土を成型し、穴窯で焼成する、というシンプルなスタイルでの作陶を続けています。 福井県越…

福井再訪 1

二年ぶりの北陸出張。新幹線の終着駅・金沢から在来線で南下し、旧知の九谷焼の作家・川合孝知さんの工房(石川県能美市)に立ち寄り、さらに次の目的地・福井県越前町へ。 ここ数年、とてもお世話になっている土本訓寛さん・久美子さん夫妻の工房を訪ねてき…

つめあと

先週発生した九州豪雨災害では、福岡県と大分県の境のあたりが、大きな被害を被っています。あの周辺は民藝的な窯業の集積地で、小石原(福岡県東峰村)と小鹿田皿山(大分県日田市)があります。 どちらも、今年4月中旬に出張で訪れた地域。小鹿田は視察だ…

朝ごはん 4

このブログで幾度もしつこく告知してきましたが、この6月は、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)の中で「器店主の朝ごはん」というコラムを連載しておりました。毎週日曜、4回にわたって掲載されてきたコラムも、今日更新された分で最…

朝ごはん 3

現在、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)の中で連載しているコラム「器店主の朝ごはん」。本日、新しい記事が更新されました。全4回の予定で綴っているこちらのコラムも、既に3回目。 今回は、正確に言えば朝食には当たらないのかも…

朝ごはん 2

前回の記事でも書きましたが、現在、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)内のコンテンツ「器店主の朝ごはん」にて、全4回のコラムを連載しています。初回分は先週の日曜に掲載され、今日はその更新日。第二回目の原稿が新たに掲載され…

朝ごはん 1

このたび、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)内のコンテンツ「器店主の朝ごはん」の6月担当のオーサーとしてご指名いただき、現在、全4回のコラムを連載しています。(一回目のみ既に公開済み)これまで同人誌などで原稿を書いたり、…

古い九州

4つの県を廻るよくばりなスケジュール組みをしてしまったため、自由時間があまり取れなかった今回の九州出張。 ただ、有田と波佐見での予定がかなり早く終了したので、その日の宿泊地・福岡に入る前に、予定していなかった太宰府に寄ることができました。太…

若い九州

先週は出張で九州北部四県を廻ってきました。 18年ほど前にこの仕事をはじめてから、九州のものづくりに興味を持つようになり、訪問した回数は数知れず。今回は二年ぶりの訪問です。 新しい窯元や工房を回ることはなかったのですが、有田や小石原で勝手知っ…

菜の花とホタルイカ

年が明けてからの三か月はあっという間に過ぎてゆき、気が付けば新年度のはじまり。こわいくらい早い。 そんな中、3月は特に慌ただしくて、生活工藝を提案する器屋だというのに、食事を作る気力がなくなり、外食の日々が続いておりました。 「これじゃいかん…

象嵌の器

福井の作り手・土本訓寛さんについては、かなり前の記事 で紹介したことがありますが、現在開催中の展示「北陸ノ手工藝」のために再び作品を制作してもらっています。前回 は焼締作品をご紹介しましたが、今回展示しているのは、妻・久美子さんとの合作の『…

ケイゾク

店内では、ほぼ2週間ごとに企画展示を開催していますが、2週間なんて、本当にあっという間。近くにお住まいの方には毎回ご覧いただいているのですが、電車で来ていただくお客さまの場合、毎回欠かさずにご覧いただくのはなかなか難しいのではないかと思いま…

ヘンクツ

ここ数年は店舗を取材していただく機会が増え、今月は、東京や世界の素敵ショップを紹介している超おしゃれーなWEBマガジン「The World Elements」で店舗を紹介してもらいました。この取材自体、とてもありがたいことだったのですが、いま考えると、わざわざ…

お鷹ぽっぽ

民藝品と呼ばれる手仕事には、それぞれ地域的な背景と歴史的な経緯があるもの。 それを無視して、むやみやたらに『デザイン』という『手』を入れてしまうと、民藝品本来の意味が失われてしまうことがあります。 以前、愛媛の両村信恵さんに新作として「白い…

耐熱の器

いま開催中の企画展「あたたまる ―スープとココアのうつわ―」で並べている山下秀樹さんの直火パン。 この器、企画展の開催に合わせて新たに制作してもらいましたが、もともとは定番作品として扱っていたもので、僕自身、以前から家で愛用。鍋焼きうどんや湯…

足跡姫

この間の火曜日は、野田秀樹さんの才能に惚れ込んでいるパートナーに誘われて、NODA・MAP第21回公演「足跡姫 時代錯誤冬幽霊(あしあとひめ・ときあやまってふゆのゆうれい)」へ。 NODA・MAPを観るのは「MIWA」以来、今回が二回めです。誘われた時には、好…

早春物語

神楽坂上の閑かな住宅街、矢来町。 うちの店が入居しているマンションの大家さんは高校の同級生のご実家。そのお宅の庭には梅の木があり、マンションのエントランス側に枝を伸ばしています。早いもので、ここに店を移してから六度目の春。 ありがたいことに…

時代の交差点

この街に引っ越して来てまだ6年の「新参者の器屋」が言うのも生意気ですが、神楽坂って、古くから続いてる器の店が多いんですよね。 かつては料亭などでの需要が多かったり、さらに山の手の住宅街を背後に控えているため、良い筋の消費者が多かったというこ…

鳥と羊毛

今年はトリ年ということで、2月3日から、陶、彫金、木工、張子などいろいろな素材を使って鳥を象った作品を集めた「トリノイチ」という展示を開催しています。 店ではおなじみになっている作り手さんが多い中で、久々に出品してくれたのが、torikomono・岩田…

いちご

いわゆるところの「丁寧な暮らし」(この言葉もどうかと思うけど)を商うような仕事をしていながら、実際には、圧倒的な力で押し寄せてくる時間という川に流されてしまうことが多い僕の日常。 そんな流れに巻き込まれる中でいろいろな記憶や経緯が薄れてゆき…

花とこけし

こけしと言えば、コレクターズアイテムといおうか、マニアックな代物といおうか、工藝の中でもちょっと特殊なポジションのもの。 奥深い世界なので、これまでは手を出すまいと思ってきたのですが、2017年しょっぱなの企画展において、とうとう手を出してしま…

生きてる

複雑な起伏を持つ坂の街には、猫が住み着きやすいもの。東京では谷中の猫なんかが有名ですが、ここ神楽坂界隈もたくさんの猫を見かけることができる場所。 うちの店の周囲にも猫のファミリーが住み着き、地域猫として人の心を和ませています。そんな状況が続…

一点一点

一般の方々にとって、うつわというカテゴリーの中で、一番ポピュラーなジャンルはやきものだと思われます。 でも、それ以外の素材のもの ―木製の漆器やガラス器やさらに金工も含みつつ構成されているのが、うつわの世界。それぞれの素材で加工方法も特性も違…

松山から

あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。さて。 新年二日目の今日、出勤してポストを開けてみると、ちょっと厚めの封筒が届いていました。愛媛でひとり地域調査隊として活動する今村さんからで、中には松山のタウン誌「松…

2016年、そして2017年

2016年の営業は昨日29日をもちまして終了いたしました。 一年間、ご愛顧いただいたみなさまに、心より御礼申し上げます。今年は、2月のアド街ック天国をはじめ、いろいろなメディアで紹介していただいたことで、新しいお客様と知り合える機会が増え、本当に…

福良雀

前田ビバリーさんの張子については、前回のブログで書きましたが、今日は、その記事の画像の中にあった張子、「福良雀(ふくらすずめ)」のお話をちょっとだけ補足的に。日本人が古来愛してきた吉祥の意匠はいろいろありますが、この福良雀もそのひとつ。『…

めでたい張子

「器屋」だと名乗りながらも、器とは関係のない郷土玩具や民藝玩具などに心奪われてしまっている今日この頃。 出張や旅行で地方に行くと、土地によってそれぞれ特色ある玩具があって、そういうものを見るのも旅の醍醐味だなあと思っています。 郷土玩具の中…

鶴と亀

鶴は千年、亀は万年。 どちらも古来、工藝のモチーフとしてたびたび用いられてきました。時代は下り、高度に文明化された現代においても、鶴と亀は長寿の象徴で、とてもおめでたいもの。 自身の人生の安寧や家族の健康を願う気持ちというのは、その根っこの…

村上修一さんの漆の器

12/2からはじまった村上修一さんの漆器展「ヒビノウツワ」。 『ヒビノウツワ=日々の器』というタイトルの通り、衒いがなく、かしこまらない漆の器たちが届いています。気付けばかれこれ8年くらい、村上さんの作品に触れてきたことになりますが、その間、塗…

酉の張子

使い勝手の良さから、最近はお店の情報発信をインスタグラムに頼ってしまい、オンラインショップやブログなどの更新が滞りがち。 もっとバランスよく、必要としてくださる方に向けて、伝えるべき情報を提供しないといけないなあ、と少々反省気味な店主です。…

袖摺坂

神楽坂周辺は起伏に富んでいて、とにかく坂の多いエリア。 急な坂、緩やかな坂、広い坂、狭い坂、長い坂、短い坂、いろいろな坂が点在しています。わが店がある矢来町全域は若狭酒井雅楽頭家の大名屋敷跡で、周囲より高い台地の上。 東西南北いずれからもは…

福島の刺子織

以前、やきものの生産形態の話について、『窯元の器』という記事で書いたことがありました。 やきものの生産形態については大まかに分けて、①工場生産品、②窯元(工房・職人)の品、③個人作家の品、の三種類があるという話をしましたが、この分類の仕方は、…

六度目の秋の日

前回の記事「静かな夏」で書いたように、静かに過ぎてゆくはずだったはずの今年の夏。ところが蓋を開けてみたら、想定外のにぎやかさで、8月と9月はあっという間に終わってしまい、時の流れに身を任せていたら、いつの間にか10月に。先月「神楽坂 暮らす。」…

静かな夏

数年ぶりに、静かな8月を迎えている矢来町。 というのも、今月1日からお隣の商業施設・ラカグが3週間にわたって改装期間に入り、昨日からは近くにあるプリンと焼菓子の有名店・ACHOさんが長期の夏季休業(8月末まで)に入っているから。 小さな店があちこち…

蓼の花の湯呑み

日本全国には、窯元が集中する伝統的な窯業地がたくさんあります。 いまは物流も情報も発達しているので、窯業地でなくても作陶ができるけれど、前近代においては、窯業地という『産地』ができることには必然性がありました。良い土が取れて、窯を築ける地形…

夏が来る

東海地方まで夏がやってきているというのに、東京の梅雨明けはまだ足踏み状態。 今日も朝から雨がしとしと降っているし、明日も午前中は雨の予報です。そんな状況でも、店の斜向かいの辻にある百日紅は、今年も少しずつ鮮やかなピンク色の花をつけ始めました…

黄磁の皿

店でお付き合いのある作り手というと、どうしても僕と年齢の近い方が多くなってしまうのですが、それと同時に、より若い世代の作り手の方々とのお付き合いもとても大事だと思っています。 ここ2年ほどお付き合いさせてもらっている笠間在住の阿部慎太朗さん…

七月七日

荒海や 佐渡によこたふ 天の河実際に見た景色を描写したものかどうか定かではないらしいのですが、こちらは芭蕉の有名な句。 立秋を過ぎた旧暦の七夕の頃に詠まれたもので、本当は『秋の句』ということになるのですが、真夏である新暦の七夕(=今日)にも諳…

草を食む

今回の奈良旅行では、春日大社の神の使いである鹿たちと戯れてきました。草を食んでいる鹿たちの様子を眺めながら、あまりのかわいさに、時が経つのも忘れてぼーっとしてしまいました。(そのおかげで行けなくなった場所もある) そののんびりとした暮らしぶ…

時のないホテル

この間の奈良旅行では、日本のクラシックホテルの代表格・奈良ホテルに宿泊。しがない器屋店主の身の丈には合っていないかなあとも思ったのですが、ネット上で調べてみたら意外とリーズナブルな部屋もあるようだったので、「えいっ」と思い切ってここに決め…

お守り犬

お土産と呼んでしまうと語弊があるけれど、先週訪れた奈良の法華寺で授与していただいた土人形『お守り犬』がかわいくて、グッとくる。法華寺は聖武天皇のお妃である光明皇后の発願による尼寺なので、ものすごく長い歴史を持っていることになります。 昨日の…

大仏さん

先週は、定休日を利用して、一泊二日で奈良に行ってきました。 いまはようやく撮り溜めた写真の整理を終え、思い出に浸っているところ。このブログでも、奈良の旅の話を断続的に書き残してゆこうと思っています。旅好きな僕ではありますが、奈良にはなんとな…

心の青空

四半世紀に渡る友人、画家のタチアキヒロさんのことは、昨夏のブログで紹介したことがあります。 『四半世紀に渡る』とは言っても、いつもべったり仲良しというわけではなく、つかずはなれず、それでも折に触れて互いの近況を知らせ合う間柄です。そんなタチ…

うつろい

3か月くらい前に開催した展覧会の時に、自分用に購入した鈴木稔さんのマグカップ。 朝夕問わず、コーヒーやお茶を飲むのに愛用している器です。 素地と釉薬とで焼成時の収縮率が違うため、見込み(内側)には『貫入』と呼ばれる陶器特有のヒビが出ています。…

緑の日々

僕は普段、大江戸線の牛込神楽坂駅から住宅街の小径を抜けて、店に出勤しています。 その途中、新潮社社長のお屋敷の長い土塀が木々の新緑とともに独特の風情を醸し出していて、林の中の小径のごとく、緑の陰が行き交う人の目と心を和ませてくれます。酸素が…

育ての地

熊本の最初の地震が起こってから、一週間あまり。 九州北部には、手仕事の販売に携わるようになってから頻繁に行くようになり、訪問回数はすでに30回くらい。僕は生まれも育ちも東京だけれど、仕事人生に大きな影響を与えたのは間違いなく九州という土地、及…