道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

愛らしいスリップウェア

ここの数年の陶芸界の動きの中で、ヨーロッパ古陶磁の加飾技法を使った「スリップウェア」というジャンルの器が見直される方向にあります。 スリップという技法は、①表面に化粧土という泥漿を掛けてから引っ掻いて紋様を描き出したり、②スポイトに詰めた化粧…

晴れやかな九谷焼

年末ギリギリになってしまいましたが、昨日、九谷焼の川合孝知さんから作品が届きました。 富士山型のかわいらしい小鉢で、おめでたい絵柄が3種。「松と鶴」、「梅と鳥」、そして来年の干支が入った「桃と猿」です。 どれも繊細な筆致で描かれ、きれいな上絵…

会津絵の椀

日本全国津々浦々では古来さまざな工藝が育まれてきましたが、作られる工藝品には、その地域の『土地柄』というものが影響するものです。上の画像は、漆作家・村上修一さんが修復した会津の古い吸物椀。松竹梅や破魔矢や桧垣など吉祥紋様の漆絵がびっしりと…

益子のスープカップ

関東を代表するやきものの産地と言えば益子ですが、前の職場に勤めていた時代は、愛知以西の窯業地を廻っていたためにあまり縁がありませんでした。現在のように益子に重心を置くようになってからは8年くらい。やきものに携わって17年になる僕の職歴の中では…

印花

僕は、『三島手』という陶芸の加飾技法が好き。以前も、越前の作り手・土本訓寛さん夫妻の三島手の器を紹介したことがあったけれど、現在開催中の展示『Classical Life』では、もう一人の三島手の作り手・池田大介さんの作品も並べています。 土本さんの作品…

越前の薪窯

陶芸の産地に関する言葉で、小山富士夫という陶芸研究家が考案した『日本六古窯』という用語があります。これは、中世から現在に至るまで継続して窯業が盛んな六つの地域、備前・丹波・信楽・越前・瀬戸・常滑を指したものです。 その六古窯のうちのひとつ、…

土味

野趣あふれる焼締の五寸鉢。『焼締(やきしめ)』というのは釉薬を掛けずに高温で焼成された器(=炻器)のことで、土ならではのざらっとした触感が特徴。釉薬を掛けていない分、『すっぴんで勝負!』というような感じの潔さがあります。 こちらの器は、越前…

大根

愛媛県の砥部からはるばる届いた竹山窯の銘々皿。染付(呉須絵具による絵付け)ならではの『ダミ』という描画技法を使った、美しい青のグラデーションが特徴です。 絵付けの柄としては珍しいようにも思える大根ですが、実は、昔から縁起のよい紋様として知ら…

アールヌーボーのつぼみ

現在開催中の企画展『ワインとおつまみ』。窓辺には、鈴木努さんの手になるロマンティックなミニワイングラスが並んでいます。花のつぼみのような形の酒盃が欲しくて、鈴木さんには、昨夏の展示の折に長いステム(脚)を持つグラスを作ってもらいました。そ…

飛びかんな

8ヶ月待ちで届いた飛びかんなの取皿。『飛びかんな』というのは、民藝陶器として有名な小石原焼(福岡県東峰村)と小鹿田焼(大分県日田市)で多用される装飾技法の名前。 バネを効かせた『かんな』という刃物を器の表面に軽く当てて轆轤を回すと、あら不思…

ぽっこり ほっこり

庄司千晶さんの手になる作品。 『ぽっこりピッチャー』という名前が付いているところが、言い得て妙。ふとっちょの鳥のごとくユーモラスなたたずまいで、窓辺に置いておいたら、チュンチュンとさえずり出しそう。お酒を注ぐための片口として使ったり、カトラ…

染付 枯淡の美

現在新宿伊勢丹5階のキッチンダイニング・デコールにて開催中のイベント「iichi CRAFTS MARKET(8/5-24)」。僕は第2期(8/12-17)に続き、第3期(8/19-24)でもキュレーターとしてダイニングテーブルのコーディネートを担当しています。上の画像の吉田崇昭…

李朝の器の如く

5月に福井に行った際に、越前の里山で作陶をしている陶芸家の土本訓寛さん・久美子さん夫妻にお会いしてきました。越前焼らしい野趣あふれる焼き締めの器も制作しているのですが、僕の目を惹いたのが夫婦合作の『三島手』の器。三島というのは、生地の表面に…