道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

さよならの向こう側

「神楽坂 暮らす。」から「コハルアン」にお店の名前を替えて、一週間あまり。 SNS関連の諸々についても、現在模様替えを試みています。ツイッター、インスタグラムに関してはアカウント名の変更が可能だったので、これまでのものを引き継ぎ、そのまま新しい…

遠い昭和

僕の頭と心のベースの部分を形作っているのは、まぎれもなく、70年代と80年代の文化。 その時代はまさにテレビの全盛期だったから、僕は生粋のテレビっ子だと言えるかもしれませんね。 今思えば、面白い番組が目白押しだった時代でした。ドラマ、コント番組…

生意気なお願い

来月にせまった店名の変更に向けて、無為に日々を過ごしてしまっていることに焦りを感じる今日この頃。 ゆるりゆるり、必要な作業が進んでいるような進んでいないような。それでもご案内状やハンコなどを制作したり、WEBのロゴをデザインしたり、ここ数日間…

益子の色

やきものというのは、その産地ごとに土や釉薬に特徴があるもの。 いまは物流が進歩し、どこにいても土や釉薬を入手できる便利な時代になったので、「産地の特徴=作り手の特徴」というかつてのシンプルな構図は見出しにくくなっているけれど、それでもやはり…

平成細雪

世に小説を映像化した作品はいろいろあるけれど、原作を読んでいないにもかかわらず、僕がいたく気に入っているのが、83年に映画化された「細雪」(原作は谷崎潤一郎)。 家業が廃れてしまった大阪船場の裕福な商家・槇岡家の没落を、四姉妹の暮らしと関西の…

力強い美

昨年夏の九州北部豪雨で、福岡の山間部にある陶郷・小石原が大水害に襲われたことについては、このブログで前に書きました。 お付き合いのある鶴見窯では、このときに起こった落雷で大事な窯が損壊してしまったのですが、その後急ピッチで復旧が進み、このた…

新しい店の名は

「暮らす。」― それは、十年程前、当時の僕が抱いていたフレッシュな野望を体現した店名です。ただ、この店の名前については、ここ数年、いろいろな思考がぐるぐると頭の中を回っていた、というのが偽らざるところ。大きく風呂敷を広げ過ぎたネーミングであ…

和と洋

僕は、染付の器が大好き。 そんな僕の独断と偏見に満ちたセレクトによって、店内は全日本染付祭りのようになっているわけですが、同じ青い色の絵付けであっても、作り手によって筆使いや発色のさせ方が千差万別なので、それぞれに妙味があって、これもまた一…

サブカルおじさん

あけましておめでとうございます。 あっという間に正月七日。今朝は、無病息災を願って七草粥を作ってみました。 新年早々で、本来は今年の抱負を語るのがスジかもしれませんが、今日はちょっとした与太話をしてみたいと思います。このところ、世の中は器ブ…

注連縄を綯う

先月は、四国愛媛へ。 砥部焼や姫だるまなど、Nowvillage 今村さんの案内で松山周辺の手仕事を中心に見てきたのですが、その道程で、かなり離れた西予に足を延ばし、上甲清さんの注連飾りの制作現場にもお邪魔することができました。注連縄作りというのはも…

ひとくち ふたくち

現在開催中の展示「ポケットに花 -坂有利子彫金展-」では、彫金作品とともに、坂さんの旧友・歩種(ポッシュ)さんの焼菓子を販売しています。今回作ってもらったのは、坂さん手製の金型で象ったクッキーで、中に苺風味のチョコレートをサンドしたものです…

おおらか

今年の誕生日は、高野山で迎えました。数年前に訪れた比叡山が厳粛な空気に満ちていたので、今回も同様の雰囲気を覚悟して行ったのですが、ケーブルカーとバスを乗り継いで急峻な山を登ると、そこにはいきなり平らかな土地と宗教都市が現れます。「こんな山…

小石原から

明後日9/15から始まるのが、企画展「いま伝えたい九州の手仕事」。この展示に関する相談と常設用の発注を兼ね、福岡県の小石原(東峰村)を訪ねたのは、4月のこと。 そのあと、7月に大豪雨による土砂災害があり、大分との県境にある小石原を含む一帯は酷い被…

当たり前のこと

素敵な器が好きな僕ですが、そこにはちょっとした枕詞が付きます。正確に言うならば、「『日々使える』素敵な器」が好きなのです。 作家ものや骨董でものすごく素敵な器を見つけると、確かに所有欲は喚起されますが、手に入れたとしても、結局使わなくなって…

瑠璃とカレー

もともとカレー屋さん巡りが好きな僕ですが、夏は料理を作る気力が萎えてしまうため、家でもカレー。それも、簡単に作れるので、もっぱらドライかキーマです。 そんなわけで、画像のごとく、この日もキーマカレー。瑠璃釉の八寸皿に盛ってみました。15年以上…

福井再訪 3

昨日の記事 では、福井の作り手・土本訓寛さんが制作する焼締の器の話をしましたが、今日は、象嵌の器について。訓寛さんが成型を担当し、そのあと久美子さんが加飾して完成する器たちの話です。 ずっと前の記事 で、ふたりで作る象嵌の徳利とぐい呑みの画像…

福井再訪 2

昨日の記事 の続き。土本さん夫妻の作品というと、かわいらしい絵柄の象嵌作品が思い浮かびますが、夫・訓寛さんは、個人作家として焼締の器を制作。地元で掘られた土を成型し、穴窯で焼成する、というシンプルなスタイルでの作陶を続けています。 福井県越…

福井再訪 1

二年ぶりの北陸出張。新幹線の終着駅・金沢から在来線で南下し、旧知の九谷焼の作家・川合孝知さんの工房(石川県能美市)に立ち寄り、さらに次の目的地・福井県越前町へ。 ここ数年、とてもお世話になっている土本訓寛さん・久美子さん夫妻の工房を訪ねてき…

つめあと

先週発生した九州豪雨災害では、福岡県と大分県の境のあたりが、大きな被害を被っています。あの周辺は民藝的な窯業の集積地で、小石原(福岡県東峰村)と小鹿田皿山(大分県日田市)があります。 どちらも、今年4月中旬に出張で訪れた地域。小鹿田は視察だ…

朝ごはん 4

このブログで幾度もしつこく告知してきましたが、この6月は、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)の中で「器店主の朝ごはん」というコラムを連載しておりました。毎週日曜、4回にわたって掲載されてきたコラムも、今日更新された分で最…

朝ごはん 3

現在、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)の中で連載しているコラム「器店主の朝ごはん」。本日、新しい記事が更新されました。全4回の予定で綴っているこちらのコラムも、既に3回目。 今回は、正確に言えば朝食には当たらないのかも…

朝ごはん 2

前回の記事でも書きましたが、現在、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)内のコンテンツ「器店主の朝ごはん」にて、全4回のコラムを連載しています。初回分は先週の日曜に掲載され、今日はその更新日。第二回目の原稿が新たに掲載され…

朝ごはん 1

このたび、WEBマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」(主婦と生活社)内のコンテンツ「器店主の朝ごはん」の6月担当のオーサーとしてご指名いただき、現在、全4回のコラムを連載しています。(一回目のみ既に公開済み)これまで同人誌などで原稿を書いたり、…

古い九州

4つの県を廻るよくばりなスケジュール組みをしてしまったため、自由時間があまり取れなかった今回の九州出張。 ただ、有田と波佐見での予定がかなり早く終了したので、その日の宿泊地・福岡に入る前に、予定していなかった太宰府に寄ることができました。太…

若い九州

先週は出張で九州北部四県を廻ってきました。 18年ほど前にこの仕事をはじめてから、九州のものづくりに興味を持つようになり、訪問した回数は数知れず。今回は二年ぶりの訪問です。 新しい窯元や工房を回ることはなかったのですが、有田や小石原で勝手知っ…

菜の花とホタルイカ

年が明けてからの三か月はあっという間に過ぎてゆき、気が付けば新年度のはじまり。こわいくらい早い。 そんな中、3月は特に慌ただしくて、生活工藝を提案する器屋だというのに、食事を作る気力がなくなり、外食の日々が続いておりました。 「これじゃいかん…

象嵌の器

福井の作り手・土本訓寛さんについては、かなり前の記事 で紹介したことがありますが、現在開催中の展示「北陸ノ手工藝」のために再び作品を制作してもらっています。前回 は焼締作品をご紹介しましたが、今回展示しているのは、妻・久美子さんとの合作の『…

ケイゾク

店内では、ほぼ2週間ごとに企画展示を開催していますが、2週間なんて、本当にあっという間。近くにお住まいの方には毎回ご覧いただいているのですが、電車で来ていただくお客さまの場合、毎回欠かさずにご覧いただくのはなかなか難しいのではないかと思いま…

ヘンクツ

ここ数年は店舗を取材していただく機会が増え、今月は、東京や世界の素敵ショップを紹介している超おしゃれーなWEBマガジン「The World Elements」で店舗を紹介してもらいました。この取材自体、とてもありがたいことだったのですが、いま考えると、わざわざ…

お鷹ぽっぽ

民藝品と呼ばれる手仕事には、それぞれ地域的な背景と歴史的な経緯があるもの。 それを無視して、むやみやたらに『デザイン』という『手』を入れてしまうと、民藝品本来の意味が失われてしまうことがあります。 以前、愛媛の両村信恵さんに新作として「白い…