道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

緑の日々

僕は普段、大江戸線の牛込神楽坂駅から住宅街の小径を抜けて、店に出勤しています。 その途中、新潮社社長のお屋敷の長い土塀が木々の新緑とともに独特の風情を醸し出していて、林の中の小径のごとく、緑の陰が行き交う人の目と心を和ませてくれます。酸素が…

育ての地

熊本の最初の地震が起こってから、一週間あまり。 九州北部には、手仕事の販売に携わるようになってから頻繁に行くようになり、訪問回数はすでに30回くらい。僕は生まれも育ちも東京だけれど、仕事人生に大きな影響を与えたのは間違いなく九州という土地、及…

顔なじみ

神楽坂は猫の多い町で、うちの店のあたりも、数匹の猫が縄張りにしているもよう。 近付くと、ほとんどの猫が警戒心をあらわにしてさっと逃げてしまう中、一匹だけフレンドリーな感じの猫ちゃんがいるのですよ。黒と白のまだらで、毛並みもよい子。首輪をつけ…

桜色の器

桜も無事開花し、明日からは新年度。 お店では、4月から、新しい作り手・廣川温さんの作品を迎えることになりました。信楽で作陶していた廣川さんの作品には、2~3年前の陶器市ではじめて出会いました。すてきな空気をまとった作品だなあという印象を受けた…

近松とCHIKAMATSU

元禄期の浄瑠璃作者・近松門左衛門に触れる機会がなぜか多い今日この頃。1月からはNHK木曜時代劇枠で2か月に渡って「ちかえもん」という作品を放送。このドラマ、スランプに陥っていた近松が、実際に起こった徳兵衛・お初心中事件に巻き込まれ、それを元にし…

週休二日

百貨店に勤務していたせいか、これまで「小売業(いわゆる『店舗』)」が週に二日休むことには抵抗がありました。 それでずっと週一日の定休日を設定していたのですが、昨年後半からは実験的に隔週で週休二日に。そして新年度からは思い切って、完全に週休二…

杜の時間

歴史好きな僕は、神社巡りも好き。でもこれまで、訪れるのは近代以前に創建された神社に限る(建築は近代になってからのものでもいいのだけれど)という『自分ルール』を持っていました。 ところが、年初にNHKのBSプレミアムで放送していた「明治神宮 不思議…

竹を編む

もう三年くらい前になるけれど、三浦しをんさん原作の「舟を編む」という映画を見ました。 広辞苑的な国語辞書(作中では「大渡海」)の編纂に没頭する若手編集者が、持ち前の粘り強さでそれを完成させるまでの物語。膨大な時間と知識が注ぎ込まれる作業を静…

天に星 地に花

思えば、5年前の地震の日は、まだ代官山の木造アパートで店舗の営業をしていました。 本震とその後頻繁にやってくる余震におびえつつ、なんとか一日の営業を終えて家路につこうとするも、電車は運転見合わせ。仕方なく徒歩での帰宅を試みたけれど、大通りは…

ミーハー

店のオフィシャルページやFBページでは告知しておりましたが、先週土曜日(2/27)、テレビ東京『アド街ック天国』の『神楽坂上』の回で店舗を紹介していただきました。 翌日曜日の神楽坂通りは、まるでお祭りのような状態だったもよう。うちの店も、普段の日…

おさるの小頭

先日の記事では、梅を見に行った湯島天神の境内で「梅まつり」なるイベントが開催されていた話について書きました。食べ物の屋台もたくさん出ていたのですが、日光さる軍団の猿回しも登場。おねえさんに連れられたタケオちゃんというお猿さんがアクロバティ…

紅白の姫だるま

愛媛県道後温泉の姫だるまは、赤い衣の中に愛らしい女の子の顔がちんまりと納まっている伝統の郷土玩具です。 昨秋開催した企画展「愛媛のてしごと」で展示販売したところ、予想以上の反響があって、ちょっとびっくり。「姫だるまはありますか?」というお客…

あこがれ

もう30年も前のことになるけれど、通っていた高校は都立校。 当時は学区制というのがあり、居住する学区内にある高校しか受験することができませんでした。僕が住んでいる世田谷区は、新宿区、渋谷区、目黒区とともに第2学区というブロックに入れられており…

こわれる

デジタル機器って、なぜか壊れる時期が重なるものですね。 思えば5年前も、パソコン、カメラ、プリンターがいっぺんに壊れて頭を抱えたものですが、現在、再びその周期が巡ってきたもよう。先月パソコンが壊れたと思ったら、今度はデジカメが瀕死の状態。デ…

風に吹かれて

昨日火曜日は店の定休日。 吹き荒ぶ寒風に煽られながら、伊勢原にある山下秀樹さんの工房を訪ねてきました。急な思い付きで。昔の養豚場を利用した山下陶房は、山岳信仰の山・大山を望む自然豊かな場所にあって、相変わらず良いたたずまいでした。 業務都合…

無国籍

細かいことを抜きにすれば、「日本国内の作り手による良き器と工藝を扱う」というのが、店の大まかな指針。 それを以って、「『和』の店」(もしくは「『和風』の店」)だと捉えられてしまうこともあるのだけれど、「日本国内で作っていること」と「『和』で…

はじらい

昨年末のこと。メガネの度が合わなくなってきたので、重い腰を上げてメガネを作りに行ってきました。かつて『メガネは~顔の一部です~♪』というメガネ屋のCMソングがあったけれど、毎日身につける(顔につける)ものですからね、似合ったもの&飽きの来ない…

白い土瓶と湯呑

器というのは日々使うもの。 器を選ぶ際に、シンプルであることを基準にする人は多いけれど、僕は、無駄をそぎ落とし過ぎることには疑問を持っています。禅僧のごとくミニマムに生きるのはある種の理想かもしれないけれど、人間なんて、そう一筋縄でいくもの…

窯元の器

長崎県波佐見町の利左衛門窯から、美しい青釉を掛けたしのぎの器たちが届きました。 ここのところ、個人作家の器を扱う割合が多かったので、窯元で作られたものがやって来るのは久々かも。そこで、今日は、窯元で作られる器についての所感をちょこっとだけ書…

てわざ

前回の記事では、長崎の作り手・小島鉄平さんの手になる愛らしいスリップウェアを紹介しました。あの記事を書いたあと、長崎を訪れた2年前の画像を見返していたら、小島さんの工房で撮った資料画像が数枚出てきました。板状にした土に泥漿(化粧土)を掛け、…

愛らしいスリップウェア

ここの数年の陶芸界の動きの中で、ヨーロッパ古陶磁の加飾技法を使った「スリップウェア」というジャンルの器が見直される方向にあります。 スリップという技法は、①表面に化粧土という泥漿を掛けてから引っ掻いて紋様を描き出したり、②スポイトに詰めた化粧…

日々

昨年は、11月末頃から多忙の波が次から次へと絶え間なくやって来て、ブログのUPまで到底手が廻らない状態でした。 そうこうしているうちに新しい年を迎えてしまい、はや5日。僕にとっては今日が仕事始めです。 備忘録として、後から読んで「あのときはこんな…

晴れやかな九谷焼

年末ギリギリになってしまいましたが、昨日、九谷焼の川合孝知さんから作品が届きました。 富士山型のかわいらしい小鉢で、おめでたい絵柄が3種。「松と鶴」、「梅と鳥」、そして来年の干支が入った「桃と猿」です。 どれも繊細な筆致で描かれ、きれいな上絵…

ウールの椅子敷き

見た目にもあたたかなウールの椅子敷き。 長崎在住の中村亜紀子さんの手になる画像の作品は、ウール100%の毛糸を束にして、木枠に張った木綿の縦糸に結びつけて織り上げたもの。この結び方は「トルコ結び」と呼ばれているもので、ペルシャ絨毯やギャッペや…

会津絵の椀

日本全国津々浦々では古来さまざな工藝が育まれてきましたが、作られる工藝品には、その地域の『土地柄』というものが影響するものです。上の画像は、漆作家・村上修一さんが修復した会津の古い吸物椀。松竹梅や破魔矢や桧垣など吉祥紋様の漆絵がびっしりと…

文化とカルチャー

旅という非日常は、普段考えないようなことをいろいろと考えさせてくれるもの。 今週は、お伊勢詣りをしたあとに京都に立ち寄ったのですが、そこでもやはりいろいろなことを考えました。京都は『喫茶店文化』(『カフェカルチャー』ではなく)がしっかりと根…

宇治山田駅

店舗の連休を利用して、三度目のお伊勢詣りに行ってきました。 行きは外宮の参道に近い伊勢市駅で下車し、帰りはクラシカルな雰囲気漂う宇治山田駅(上の画像)を利用。この宇治山田、日本の国の一の宮とも言える伊勢神宮の玄関口ということで、かなり立派な…

益子のスープカップ

関東を代表するやきものの産地と言えば益子ですが、前の職場に勤めていた時代は、愛知以西の窯業地を廻っていたためにあまり縁がありませんでした。現在のように益子に重心を置くようになってからは8年くらい。やきものに携わって17年になる僕の職歴の中では…

金工 小さな工藝

昨日放送のテレビ東京『美の巨人たち』は、幕末~明治期に活躍した伝説の金工家・正阿弥勝義の特集。その技術の極みとも言える『古瓦鳩香炉』を中心に、超絶技巧と称される細かい手わざによって作られた金工作品を紹介していました。 出会った瞬間の驚き、そ…

ドキュメント72時間

”ひとつの場所に3日間。72時間ずっといたら、どんなことに出会えるだろう?人々が行き交う街角の片隅にカメラをすえて定点観測し、3日間の偶然の出会いを記録する「ドキュメント72時間」。同じ時代、同じ空の下に、たまたま居あわせた私たち。みんな、どんな…