道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

秋の日の

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夏の強い日差しも過去のものになり、どこか愁いを含んだような西日が、店の奥まで伸びてくる季節になりました。

思い起こせば、この夏は伊勢丹での展示をはじめとした諸々の業務のためにこまねずみのごとく動き回っていて、まさに『心を亡くす』ような状況でした。
元々はそういう煩わしさを避けるため、一人でゆっくりのんびりお店を切り盛りする人生を選んだつもりだったんですけどね。でも実際にはそんな優雅なことを言っていられるはずもなく、オファーがあれば、店の外にも出てゆかなければならない身の上です。
この夏はそんな日々が続き、今の自分には新しい体験がまだまだ必要なのだということも痛感しました。いつもと違う業務をこなすことで新しい世界が見えたし、それなりの収穫や充実感もあったし、時と場合によっては心を亡くすこともアリなのかなあ、と思いましたね。
ただ忘れてはいけないのが、僕の仕事は、自らの思考を反芻させながら、『きれいなこと』や『楽しいこと』を組み立ててゆく仕事だということ。つまり、心を亡くしている状態を長く続けるのは、あまり良いことではないわけです。心を亡くしたままだと、美しいものを見定める目が曇ってしまいますからね。
要は、メリハリが必要だということかな。

現在は、ようやく自分らしいいつものペースを取り戻せてきた感があり、ほっと息をついているところ。頭の中にも少しは思考を楽しむ余裕ができてきました。
ヴェルレーヌの秋の唄を口ずさむにはまだ早いけれど、抒情豊かな秋の日々を満喫しながら、これからはちょっとだけ歩を緩めて『きれいなこと』や『楽しいこと』を目に見える形にしてゆきたいなあと思います。
心おだやかに。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp