道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

越前の薪窯

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陶芸の産地に関する言葉で、小山富士夫という陶芸研究家が考案した『日本六古窯』という用語があります。これは、中世から現在に至るまで継続して窯業が盛んな六つの地域、備前丹波信楽・越前・瀬戸・常滑を指したものです。
その六古窯のうちのひとつ、越前焼で知られる福井県越前町を初めて訪れたのは、5ヶ月前のこと。とあるご縁で知り合った作り手の工房を2軒廻ってきました。
小ぢんまりとした窯業地ゆえ大きな窯元がなく、個人作家として活動する作り手が多いのが越前の大きな特徴。また、流通が進歩した現代では珍しく、地元で採れた土だけを使ってミニマムな営みを続けているところも特殊です。地味ではあるけれど、過不足なく土着的な物作りに徹している窯業地だと言えるかもしれません。

前回の記事で紹介した、越前焼の味わいを凝縮したような土本訓寛さんの焼締鉢は、上の画像の薪窯焼成されたものです。
工房や窯の周りでさえずる鳥の声や草木が放つ緑の匂い。そういった鄙の地の空気が焼き締めた土の中に沁み込んで、器自体にさらなる魅力を添えているような気がします。


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