道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

日々

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昨年は、11月末頃から多忙の波が次から次へと絶え間なくやって来て、ブログのUPまで到底手が廻らない状態でした。
そうこうしているうちに新しい年を迎えてしまい、はや5日。僕にとっては今日が仕事始めです。
備忘録として、後から読んで「あのときはこんなことを考えていたのか」的な確認も必要かと思うので、今日は「今年の抱負」のようなものをつらつらだらだらと書き綴っておきたいと思います。

昨年2015年の僕のテーマ(=店のテーマ)は、「旅」でした。
これまでも旅をしながら作り手さんとの対話を繰り返してきたけれど、それをさらに深く掘り下げた年になりました。旅先では、その土地でなぜその手仕事が育まれてきたのかというような疑問への手掛かりとして、地形・気候などの風土とともに、食べ物・建築などの住文化をよく観察することを心がけたつもり。
インスタグラムでは旅先で食べたものなどをしばしばUPしていたので、「こいつ食ってばかりいるなあ。仕事しろ!」などと思った方もいるかもしれないけれど、あれは僕なりの見知らぬ土地へのアプローチ法でもあったわけです(食いしん坊であることは確かですけどね)。
様々な工藝をフィールドワーク的に捉えてゆきたい気持ちはとても強いので、「旅」というテーマは昨年限定の一過性のものではなく、これからも引き続き僕の思考のコアとして生き続けるものになると思います。

そして2016年。
昨秋アラフィフと呼ばれる年齢帯に足を踏み入れ、若い頃とは違う身体の好不調があったりして、ああ、こうやって人間は年を取ってゆくのか、ということをとみに実感するようになりました。機械と同じく、人間の体も何らかのメンテナンスをしないといけないものなんでしょうね。
そこで思い浮かぶのは、言い古された感があるけれど、「sustainable(持続可能な)」という言葉。これから細く長ーくこの商いを続けてゆくためには、ゆっくりとした歩幅で事を漸進させてゆくというやり方も必要なのだと思い到るようになりました。遠回りのように見えても、それが近道だということもある。進んでいないように見えて、進んでいることもあったりする。
一昨年と昨年は一足飛びに沢山の事を成し遂げようとして、外で活動する機会を設けたりしたけれど、今年は少しだけ休息を多めに取って体と頭に滋養を与え、内なるものを充実させることに集中したいと考えています。

また「sustainable」というのは、僕という一個人にとってだけではなく、広い意味で「工藝界(殊に器業界)」にとっても必要な概念ではないかと思っています。「器業界」はいま民藝ブーム&作家ブームで活況を呈しているようですが、当事者としては、これがバブルにならないように心してゆかなければならないなあ、と。
たとえば‥‥‥。
現在、クラフトフェアというジャンルのイベント(お祭り)が増えて続けています。もはや乱立。これは良く解釈すれば、「工藝という分野の裾野が広がる」ことなのかもしれないけれど、悪く解釈すれば、「薄まる(技巧のレベルが落ちる)」ということにも繋がりかねない。
より多くの人の耳目を工藝に集める手段として「祭りだ祭りだー」と囃すことも時には必要なのかもしれないけれど、僕自身「器業界」の片隅で生きる人間として、お祭り依存の状況が常態化することには疑問を感じています。お祭りというのは、あくまで一種のカンフル剤ですからね。そういう薬を常用していたら、そのうちに効き目もなくなるだろうし、いずれは副作用も出てくることでしょう。本当の意味で裾野を広げたいのであれば、その後の「根付かせる」算段が大事になってくるわけです。(一応フォローしておくけれど、老舗の「松本クラフトフェア」や「工房からの風」あたりは根付かせることについてもきちんと視野に入れていると思う)
そんな意味もあり、店としては「お祭り」よりも「日々のこと」に心を配りたいと思っています。器業界における「ねづかせがかり(←いきものがかり風に表現してみたよ)」として、良き手仕事を、店舗という安定した「場」で日常的継続的に販売すること。それを自らの役割として課してゆきたいものです。

語り過ぎた感がありますが、「sustainable(常に持続可能な生き方を模索しながら、日々ゆっくりと歩を進めてゆく)」というのを公私ともに2016年のテーマとしてみたいと思います。
では、今年もどうぞよろしくお願いいたします。ウキーーーーッ。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp