道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

窯元の器

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長崎県波佐見町の利左衛門窯から、美しい青釉を掛けたしのぎの器たちが届きました。
ここのところ、個人作家の器を扱う割合が多かったので、窯元で作られたものがやって来るのは久々かも。そこで、今日は、窯元で作られる器についての所感をちょこっとだけ書いておこうと思います。

某百貨店の和食器売場に勤めていた頃(15年ほど前ね)は、あらゆるお客様の要望に対応できるように、①工場生産のもの、②窯元のもの、③作家もの、様々な生産形態の器を仕入れて販売していました。いかにも百貨店らしいアイテム揃えで。
独立してお店を開くにあたっては、上記のうちの②と③を扱うことに。本来、うちのようなちいさな店であれば、②か③のどちらかに絞り込んでアイデンティティーを確立してしまうのがいいんですよね。『ギャラリー』を名乗ってやっていくなら③のみを扱おう、とか、『食器屋』としてやっていこうとするなら②だけでいこう、とかいう風に。
でも僕自身、プライベートでは②と③の器をどちらも使っていて、それらをバランスよく使うことで食事が楽しくなるという実感があるので、結局ハイブリッドの道を選んでしまいました。

では、②と③との違いはどこにあるのでしょう。
大雑把に言えば、②は窯元に所属する『職人』(一名~数十名)により生み出されるもので、安定したルーティンワークにより、ある程度の量産が可能であることが特徴(ゆえにお値段抑えめ)。③は『陶芸家』(基本的には個人)の手になるもので、比較的時間をかけて、凝った作品制作をしていることが特徴(ゆえにお値段お高め)。
とは言いつつ、よく見てみると、内情はさまざまなんですよね。窯元の中には、工場に限りなく近いスタンスのところがあったり、作家に近いスタンスのところもあったり。逆に作家の中にも、窯元に近いスタンスの人がいたりするわけです。
そんな事情もあるため、うちの店では②と③を紋切り型に分離するのではなく、『僕自身の目』というフィルターを通して良き手仕事をミックスしてゆけばよいのかなあと考えました。今は、そういうものをバランスよく提案できる人がいなくなってきていますからね。
スペシャリストがもてはやされる時代に、あえて地味なゼネラリストとして。ボーダーを設けないこういう商いも、方法論としてはむしろアリなのかな、などと思います。

作家ものと並ぶもうひとつの器作りのありようとして、やきものの産地に根付く窯元の仕事には、これからも注目してゆきたいと考えています。


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