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道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

あこがれ

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もう30年も前のことになるけれど、通っていた高校は都立校。
当時は学区制というのがあり、居住する学区内にある高校しか受験することができませんでした。僕が住んでいる世田谷区は、新宿区、渋谷区、目黒区とともに第2学区というブロックに入れられており、結局、新宿区にある高校に進学。その後は、大学=渋谷区、専門学校=渋谷区、初めの職場=目黒区、次の職場=渋谷区、独立=渋谷区、という経緯を経て、今ふたたび新宿区。もうアラフィフだというのに、旧第2学区内をぐるぐる回っているだけ(笑)。本当に狭い世界で生きてるなあ、と自分でも恥ずかしくなってしまいます。
東京23区の左半分のさらに下半分を占めるこのエリア。人生のほとんどを過ごした場所なのでとても馴染み深いけれど、30代半ばに時代小説を読み出すようになってからは、23区の右半分に対する興味がむくむくと頭をもたげてきました。
特に、若い時分はじじいばばあの街だと馬鹿にしていた浅草には、頻繁に出かけるように。居心地がいい場所だということに気付いてしまったわけです。

店休日だった昨日は、そろそろ咲き始めているであろう梅を見るために、その『右半分』へと足を延ばしました。
『梅=天神さま』ということで、はじめは亀戸まで行こうと思ったのですが、いやいや、行ったことがない場所に行ってみようと思い直し、湯島天神へ。通勤で使っている大江戸線に乗り、いつもの牛込神楽坂を乗り越して本郷三丁目まで。そこからは春日通りをてくてく歩いて、冬の散策を楽しみました。
天神さまの境内は、梅まつりなるイベントが開催されているため、とてもにぎやか。甘酒を飲んで体をあたため、猿回しを見て腹を抱えて笑い、青空の下で穏やかな午後のひとときを過ごすことができました。
肝心の梅は、木によって満開だったり、五分咲きだったり、ばらばら。紅梅よりは白梅の方が多いので、全体的に優雅で上品な雰囲気です。きりっとした冷気の中をほんのり漂う芳き香りに、すぐ近くで足踏みしている春の足音を聞いたような気がしました。

江戸時代、江戸市中と市外を分ける境界線は朱引線と呼ばれていました。湯島本郷エリアはもちろん、朱引線の内。旧第2学区のほとんど(特に世田谷)が朱引線外の近郊農村だったことを思うと、当時すでに町場であった地にはあこがれのような感覚を抱いてしまいます。江戸の市井に生きた人びとの息遣いが今にも聞こえてくるようで。
このあと上野まで歩いたけれど、昔からの町場はやっぱり楽しいなあ。いつかこのあたりで暮らしたくなる日が来るかもしれないなあ。
23区の右半分は、左半分で生まれ育った者にとってひそかなあこがれのエリアです。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp

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