道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

六度目の秋の日

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前回の記事「静かな夏」で書いたように、静かに過ぎてゆくはずだったはずの今年の夏。ところが蓋を開けてみたら、想定外のにぎやかさで、8月と9月はあっという間に終わってしまい、時の流れに身を任せていたら、いつの間にか10月に。

先月「神楽坂 暮らす。」は丸5年を迎えましたが、一見特別な時間に見える『5周年記念日』も、いつもと変わらぬ日常としてさらりと過ぎてゆきました。
僕にとっては、こういう流れるような時間の経過の仕方は本望ですが、ただ、長い期間お店を愛してくれているお客さまには、5年という節目にあたり、この場を借りてお礼を言わせていただかなければならないと思っています。
いつも本当にありがとうございます。

今回、5周年イベントなどは考えていませんが、次の「六度目の秋の日」(10/15-30)という展示は、ひそかに思い入れのある企画だと言ってよいかもしれません。秋らしい雰囲気の器と布を紹介する新作展なのですが、新しくお取り扱いをはじめる作り手の方々の作品が含まれているため、ちょっとうきうきしているのです。
「暮らす。」は『イベントスペース』でも『ギャラリー』でもなく、『器屋』を標榜しています。毎週毎週並ぶものがガラリと変わるわけではなく、ゆっくりとした新陳代謝の中で、気付いてみたら次のステージに行っているような存在を目指しているのです。
だから、長きにわたり作品を作ってくれている定番の作り手とともに、「暮らす。」のありように賛同してくれる新たな作り手の方が加わってくれることは、うちのような店にとってとても大事なこと。『新しい』という非日常も、やがては日常という坩堝に溶け込んでゆく。日常って、結局はそういう『雑多』なもののパッチワークだと思うし、器を含む生活工藝は、本来そういう中で存在するのが一番自然だと思います。
僕が常々目指している『3歩進んで2歩下がる』的な店の動き方は、デパートやギャラリーの週替わりイベントなどを見慣れている方からすると緩慢に見えるかもしれませんが、「暮らす。」という日々続いてゆく状態を店名として掲げるうちの店からすると、その緩慢さこそがとても大事なことに思えてなりません。
僕という一個人にはまだまだ足りないことが多くて、もっと美意識を研ぎ澄ませてゆかなければいかんなあと心していますが、お店については、そういう鋭角的な部分の角を取りながら、あらゆるものが溶け込んだ坩堝=雑多な日常を体現したものにしてゆきたいと思っています。

5年はただの通過点、ですよね。
どうぞ末永くご贔屓に。これからもよろしくお願いいたします。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp