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道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

生きてる

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複雑な起伏を持つ坂の街には、猫が住み着きやすいもの。東京では谷中の猫なんかが有名ですが、ここ神楽坂界隈もたくさんの猫を見かけることができる場所。
うちの店の周囲にも猫のファミリーが住み着き、地域猫として人の心を和ませています。

そんな状況が続く中、昨年か一昨年に生まれてこのあたりをうろうろしているのが、あどけないはるみちゃん。
はるみちゃんというのは、ある方の提案によって仮に付けた名前(「家政婦は見た」で市原悦子さんが飼ってた猫の名前ね)だったのですが、インスタグラムでその生活ぶりを折にふれてリポートしていたところ、お客さまの間でもすっかり定着。今はお客さまだけではなく、作品を納めに来る作家さんたちも、はるみちゃんと呼んでいるのです。
ところが、昨年の夏頃、うちの店が入るマンションの裏庭から悪臭が漂うようになり、それがはるみちゃんファミリーの『粗相』によるものだいうことが大家さんの調査により判明しました。
すごくかわいい子たちなんですけどね、店の入口に悪臭が漂ってる状態というのは、商売してる身としてはちょっとキビシイ。そして、建物の上階のマンションに住まう方々にとってもツライ状況なわけで、大家さんがはるみちゃんファミリーの敷地内への侵入を阻止する事態に至りました。猫よけの忌避剤を蒔くその作戦は功を奏し、その後ファミリーが敷地内に侵入することはなくなりました。それでもこの界隈をうろうろしているので、会えば声をかけたりしていました。

そんなこんなで11月末、真冬並みの寒波が訪れた日のこと。
扉を開け放ったまま営業している店の中もかなり寒かったのですが、それでも外よりは全然まし。夕暮れ時になってさらに寒さが増してきた頃、店内に気配があったので、そちらに目をやると、なんと、はるみちゃんが商品を物色しているではありませんか!あたたかい空気に惹かれてやってきたのですね。
はじめは入口近くでお客さまのフリをしてたたずんでいたのですが、怒られないことを知ると、すこーしずつ店の奥へ。「だるまさんがころんだ」みたいな感じで徐々に近づいてくる。気付くとカウンターの真下まで接近していて、かわいい顔で僕のことを見上げていました。ひととき、心の交感。
たしかに粗相されちゃあ困るけどね、悪戯さえしなければ、どうぞどうぞ店内で暖をとってゆきなさい、という感じ。
この後、閉店間際にさっといなくなったけれど、記録的にお客さまが少ない日だったので、けっこう長く同居の時間が続いたかな。はるみちゃんも暖をとれて一息ついたかもしれないけれど、僕の心にもあたたかなものが灯った不思議な時間でした。

なんか乾ききってる最近の世の中。
人間じゃない他の命と同じ時間を過ごすことで、心にじんわりと湿り気が戻って来て、人にもやさしくなれそうな気がしました。
こんな時間があってもいいよね。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp

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