道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

お鷹ぽっぽ

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民藝品と呼ばれる手仕事には、それぞれ地域的な背景と歴史的な経緯があるもの。
それを無視して、むやみやたらに『デザイン』という『手』を入れてしまうと、民藝品本来の意味が失われてしまうことがあります。
以前、愛媛の両村信恵さんに新作として「白い姫だるま」を作ってもらった時にも、そのあたり、伝統を壊さないように細心の注意を払ったものです。

上の画像は、「お鷹ぽっぽ」という米沢の民藝品。
米沢藩の名君・上杉鷹山の殖産興業政策によって農民の農閑期の仕事として広まったものだそうです。
コシアブラという木をサルキリという刃物一本で彫り上げてゆくワイルドな木彫(笹野一刀彫)で、本来はこの造形の上に絵具で加飾が成されて完成品になるわけですが、今回入荷したのは、デザインユニット「山の形」のディレクションによるもの。一切の着彩を排した作品です。白木の状態で完成形とすることによって、自然の樹木が持つ素材の美しさと長い歴史に育まれた手わざの力強さがことさら強調されるように感じます。
ここで用いられているのは、「手を入れる」という足し算ではなく、「化粧を落としてみる」という引き算の手法。このデザイン手法は、お鷹ぽっぽに関する限り、とてもしっくりハマっているように思えます。表面の陰影に目を凝らすと、顔や羽根を描き込んでいるわけではないのに、そこには見る側の想いを映し出した表情が浮かび上がってくるような気がします。

オンラインショップへの掲載はまだですが、神楽坂の店頭では先行して販売を開始。
白木の彫刻の中に宿る造形の力にぜひ触れていただきたいと思います。


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