道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

おおらか

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今年の誕生日は、高野山で迎えました。

数年前に訪れた比叡山が厳粛な空気に満ちていたので、今回も同様の雰囲気を覚悟して行ったのですが、ケーブルカーとバスを乗り継いで急峻な山を登ると、そこにはいきなり平らかな土地と宗教都市が現れます。「こんな山の上に⁈」と、ちょっと意表を突かれるほど、おだやかな空気が漂う場所でした。
僧侶とともに一般の人びともたくさん住んでいるとのことで、下界と隔絶されているにも関わらず、孤立した感じはありません。聖と俗がほどよく混在した中で生活が営まれていて、とても大らかな雰囲気。
それでも、弘法大師のお住まいである奥之院への入り口・一ノ橋を渡ると空気は一変、ピンと背筋が伸びるような感覚に。
森と清流が奥之院を囲む様子は、原初的な神道アニミズム)の存在を彷彿とさせる光景。万能の天才だった弘法大師は、当時最新の教義であった密教をただ日本に移植するのではなく、日本の風土に合わせた形で布教しようという想いからこの地を選んだのでしょう。さらにその意を汲む形で真言が受け継がれ、人々の信仰が幾重にも重なり、この宗教都市が出来上がったことがわかりました。

僕は敬虔な仏教徒ではないけれど、実家の宗派は真言宗
弘法大師とのご縁のようなものを密かに感じつつ、遠い昔の巡礼者のごとく、大きな力に守られているような感覚をおぼえました。

(画像の朱色の塔は、壇上伽藍の根本大塔)


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