道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

新しい店の名は

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「暮らす。」― それは、十年程前、当時の僕が抱いていたフレッシュな野望を体現した店名です。

ただ、この店の名前については、ここ数年、いろいろな思考がぐるぐると頭の中を回っていた、というのが偽らざるところ。

大きく風呂敷を広げ過ぎたネーミングであったなあ、と思ったり、いろいろなものを背負わせ過ぎたかな、と思ったり。この名がもたらすイメージから、これまで様々な方々に大変な買いかぶりをしていただいたようにも感じていました。
ただ、僕はそんなごたいそうな人間ではないので、もっと矮小な自分でいたい、というのが本音。矮小という言葉の印象があまり良くないとすれば、こぢんまり。箱庭的なサイズのフィールドで生きる中で、自給自足的に小さな幸福感を得たいと思っている人間です。
お店自体も、単なる個人商店(町の器屋ね)に過ぎないわけで、これまで様々な方向に広がってしまったイメージのあれこれを、自分の手のうちに戻したいと考えるようになりました。

そこで思いついたのが、これまで無理を強いてきた「神楽坂 暮らす。」という店名に、感謝の想いを込めて隠居していただくこと。そして、自分の身の丈にあった新たな名前にお出まし願うこと。
新しい店名については熟慮してきました。パーソナルな部分を重視して、自分の名前をそのまま冠する「うつわ 春山」みたいなものも考えてみたけれど、あまりに自己愛が強すぎて鼻につくので、やめておきました。
結局のところ、思考の着地点は『小さな春山がいとなむ庵』ーすなわち「小春庵」でした。その過不足のない感じが気に入り、二年くらい前に心に決め、イメージを膨らませながら熟成させてきたのです。
でも、そのままだと、髪をひっつめた小春婆さんが切り盛りしていそうな感じなので、表記はすっきりとカタカナで「コハルアン」にしたいと思います。将来僕がジジイになったときに漢字表記(それもロゴは筆文字ね)にする可能性は否定しませんが、しばらくは軽やかな音の響きを重視して、「コハルアン」でやっていくつもりです。
目の前に迫った五十才から先の日々に思いを馳せるならば、この名前には自分の持ち味が含まれていて、よくお出汁がしみた煮物のような滋味とともに、そこはかとない可笑しみが感じられるのではないか、と思っています。

この「コハルアン」という名前が、これからの航海の新しい澪標(みおつくし)となってくれることを願いつつ、以上を店名変更のご案内とさせていただきます。

来る3月1日をもちまして、新店名での営業に移行する予定でおります。
以後も「神楽坂 暮らす。」改め「コハルアン」に、より一層のご愛顧をいただきますよう、お願い申し上げます。


神楽坂 暮らす。(コハルアン) オフィシャルページ http://www.room-j.jp