道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

時のないホテル

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この間の奈良旅行では、日本のクラシックホテルの代表格・奈良ホテルに宿泊。
しがない器屋店主の身の丈には合っていないかなあとも思ったのですが、ネット上で調べてみたら意外とリーズナブルな部屋もあるようだったので、「えいっ」と思い切ってここに決めたのです。
敬愛する松任谷由実女史の往年の名曲で、ロンドンのホテルを舞台にした『時のないホテル』というサスペンスフルな歌がありますが、その歌詞に出てくる「ここは置き去りの時のないホテル/20世紀を楽しむ場所」というフレーズがしっくりくる雰囲気でした。
以前泊まったことがある友人は「おばけが出そう」なんて失礼なことを言っていましたが、まったくそんなことはなく、手入れがよく行き届いた心地よい空間。一泊のみの滞在でしたが、重厚で豪奢な内装や調度品が珍しく、うろうろ徘徊して、館内の隅々まで観察してしまいました。

ここ数年は出張旅行ばかりで、お安めのビジネスホテルに泊まることがほとんどだったのですが、今回は仕事を離れた完全なプライベート旅行だったこともあり、ちょっとだけ贅沢してよかったなあと思います。
僕が売っているのは、使うだけならば事足りる『100均の器』ではなく、ある程度手が込んだ『手仕事の器』。他人様にそういうものをおすすめするのであれば、しがない器屋店主と言えど、ときには『ちょっとの贅沢』を経験してみるのもありかな、などと思ってしまいます。
おかげで、人もまばらな夜のラウンジで想像の翼を広げて、うちの店のすてきな未来についてあれこれ思い描くことができましたよ。
この感覚、忘れないようにしなきゃ。

ちなみに『時のないホテル』は、「ひげを抜かれたお客はみんな/けっしてここを出てはいけない/けっして/出てはいけない出てはいけない/出ては」というちょっと怖いフレーズで終わるのですが、翌朝はすっきりとした目覚めでチェックアウトすることができました。よかったよ。


神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp