道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

福良雀

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前田ビバリーさんの張子については、前回のブログで書きましたが、今日は、その記事の画像の中にあった張子、「福良雀(ふくらすずめ)」のお話をちょっとだけ補足的に。

日本人が古来愛してきた吉祥の意匠はいろいろありますが、この福良雀もそのひとつ。『お米が豊作だと、そこに群がる雀たちもまるまると太る』ことから、肥えた雀は豊かさや富の象徴だと考えられてきたのです。
動物や自然を愛した昔の日本人は、そういう身の回りの事象の中に吉祥につながる意味を敏感に見て取り、工藝デザインの中に取り込んできました。『ふっくらとした雀』の『ふっくら』には語呂合わせで『福良』という文字をあて、さらにおめでたさを演出しています。

そんな福良雀が、ビバリーさんの手によってかわいらしい張子人形になりました。
全体のまるっとした形状がかわいいのはもちろんなのですが、背中に描かれた紋様がとてもかわいい。金地に、松竹梅、鶴亀、富士山、とおめでたいアイテムがてんこ盛り。普通これだけの絵柄を盛り込むとギラギラとどぎつくなるのが普通ですが、ビバリーさん特有の緩めのタッチでさっと描かれているので、すうっと目になじんできます。
さらに胎内に鈴が入っているので、振るとチリンチリンとかわいらしい音が鳴る仕掛け。本人には確認していないけれど、『すずめ』と『すず』の語呂合わせなのかな?
手のひらサイズの小さな張子の中に、繊細な技が詰め込まれたかわいい手仕事です。


企画展 あらたま・ことほぎ 2016/12/16-2017/1/9 http://www.room-j.jp/gallery/2016/12/1216-2017.php
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