道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

ひとくち ふたくち

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現在開催中の展示「ポケットに花 -坂有利子彫金展-」では、彫金作品とともに、坂さんの旧友・歩種(ポッシュ)さんの焼菓子を販売しています。

今回作ってもらったのは、坂さん手製の金型で象ったクッキーで、中に苺風味のチョコレートをサンドしたものです。
クッキー生地は、卵と牛乳と砂糖を使わずに作られています。展示の前、一足先に味見をさせてもらったのですが、その時の印象がちょっと不思議だったので、手短に書き残しておきますね。
ひとくちめは、正直言うと、味がしないように感じられたのですよ。「ん?」と思ってもう少し口にすると、ほんのり甘い。みたび口にすると、さらに甘い。間にはさんだチョコの甘さではなく、食べ進めてゆくごとに、小麦そのものにほのかな甘みがあることがわかってくるんですね。そして、小麦粉は単に空腹を満たすだけの粉じゃない、ということもわかってくる。
ふだん味の濃いものに慣れきってしまい、舌が麻痺してしまっていたことに愕然としました。でも、その舌も、自然の力に接してゆくことで、本来の味覚を取り戻してゆくものなのですね。
ひとくちめよりふたくちめ。ふたくちめよりみくちめ。これって、味覚だけにとどまらない大事なことかもしれません。
噛めば噛むほど味が出る。本物でないと醸すことができないこういう感覚は、日常の中でも大切にしてゆきたいものだと思います。


■ 神楽坂 暮らす。 オフィシャルページ http://www.room-j.jp
■ ポケットに花 -坂有利子彫金展- http://www.room-j.jp/gallery/2017/11/1117.php