道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

注連縄を綯う

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先月は、四国愛媛へ。
砥部焼や姫だるまなど、Nowvillage 今村さんの案内で松山周辺の手仕事を中心に見てきたのですが、その道程で、かなり離れた西予に足を延ばし、上甲清さんの注連飾りの制作現場にもお邪魔することができました。

注連縄作りというのはもともと、農家が稲刈り後の農閑期に行う副次的な仕事として発生したものだと思うのですが、上甲さんの場合は発想が全く逆で、稲刈り後が本番。食べるためのコメを作付けするのではなく、年末の注連飾りを作るためだけにコメを作っているのです。だから、色や形がきれいなものを育てることに注力し、稲刈りについてもすべて手作業。注連縄に対する並々ならぬ情熱を感じます。
伺ったときは、ちょうど注連縄制作の最繁期だったのですが、邪魔であることは重々承知しつつ、作業を見学してきました。

稲わらをたたいて湿らせて一本の縄に綯ってゆく。手と足を使って、絶妙な力加減で見事に綯ってゆく。自然の産物である稲が意思をもって一つの造型に収斂してゆく様は、感動的でした。
現代はデジタル技術に支配された高度情報社会だけれど、人は本来、こういうアナログな創意工夫の積み重ねによって長い営みを続けてきたんですよね。時代を後退させろ、とは言わないけれど、現代人に不足しているのはこういうアナログ感だし、そういう感覚に価値を見出す人が増えてきていることも間違いないと思います。
上甲さんは高齢だけれど、意気軒高。これからも美しい注連縄を作ってくれそうです。まだ今年の注連飾りを作っている最中なのに、来年挑戦してみたいことを口にしていて、それはなんて素晴らしいことだろうと思いました。人間が動物と違うのは、今日のことだけではなく、未来に思いを馳せることができる、という点。ここ最近、日々の雑務に忙殺されていたので、上甲さんには、生きることの楽しみや明るさを教えてもらったような気がします。

上甲清さんが作る注連飾りは、12月2日正午より店頭で販売開始いたします。
オンラインショップには、12月2日6時頃掲載する予定。どうぞおたのしみに。


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