道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

益子の色

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やきものというのは、その産地ごとに土や釉薬に特徴があるもの。
いまは物流が進歩し、どこにいても土や釉薬を入手できる便利な時代になったので、「産地の特徴=作り手の特徴」というかつてのシンプルな構図は見出しにくくなっているけれど、それでもやはり、作陶における必然というのは脈々と受け継がれているものではないでしょうか。

僕がよく行く益子にも、特徴のある釉薬がいくつかあります。
青磁と呼ばれている釉薬もそのひとつ。土との相性や焼成の具合によって発色の仕方は異なりますが、水色、ターコイズ、ペパーミントグリーン、そんな表現が似合う色です。
昔ながらの益子焼を見ると、メインとなる色(黒釉や柿釉)と掛け分けて、アクセント的な位置付け=脇役で使われることが多かったようですが、この釉薬の色、よく見れば意外とポップ。現代であれば、脇役ではなく主役として十分に通用する色なんですね。

いま開催している展示「あたたかな青」では、益子の矢口桂司さんが糠青磁を単独で施釉した器にチャレンジしてくれています。
同じ水色であっても、透明感があると涼やかな感じになるのでしょうが、この釉薬ガッシュ(不透明)感のあるところが特徴。ぽってりやさしく、あたたかな風合いに仕上がっています。季節を問わず使えそうな雰囲気がありますよね。
お皿とかマグカップとか、いろいろと並べているけれど、どれも矢口さんならではの造形感覚と相まって、かわいらしいたたずまい。「あたたかな青」は、「神楽坂 暮らす。」として最後の展示 になるわけですが、地味ながらもこれまでやってきたことが無理なくキュッとまとまっていて、なかなかよい雰囲気を醸していると思います。


神楽坂 暮らす。(コハルアン) オフィシャルページ http://www.room-j.jp
あたたかな青 2/3-18  http://www.room-j.jp/gallery/2018/01/23-1.php