道草雑記帖

「神楽坂 暮らす。」店主の備忘録/日々のこと/器のこと

2015-01-01から1年間の記事一覧

晴れやかな九谷焼

年末ギリギリになってしまいましたが、昨日、九谷焼の川合孝知さんから作品が届きました。 富士山型のかわいらしい小鉢で、おめでたい絵柄が3種。「松と鶴」、「梅と鳥」、そして来年の干支が入った「桃と猿」です。 どれも繊細な筆致で描かれ、きれいな上絵…

ウールの椅子敷き

見た目にもあたたかなウールの椅子敷き。 長崎在住の中村亜紀子さんの手になる画像の作品は、ウール100%の毛糸を束にして、木枠に張った木綿の縦糸に結びつけて織り上げたもの。この結び方は「トルコ結び」と呼ばれているもので、ペルシャ絨毯やギャッペや…

会津絵の椀

日本全国津々浦々では古来さまざな工藝が育まれてきましたが、作られる工藝品には、その地域の『土地柄』というものが影響するものです。上の画像は、漆作家・村上修一さんが修復した会津の古い吸物椀。松竹梅や破魔矢や桧垣など吉祥紋様の漆絵がびっしりと…

文化とカルチャー

旅という非日常は、普段考えないようなことをいろいろと考えさせてくれるもの。 今週は、お伊勢詣りをしたあとに京都に立ち寄ったのですが、そこでもやはりいろいろなことを考えました。京都は『喫茶店文化』(『カフェカルチャー』ではなく)がしっかりと根…

宇治山田駅

店舗の連休を利用して、三度目のお伊勢詣りに行ってきました。 行きは外宮の参道に近い伊勢市駅で下車し、帰りはクラシカルな雰囲気漂う宇治山田駅(上の画像)を利用。この宇治山田、日本の国の一の宮とも言える伊勢神宮の玄関口ということで、かなり立派な…

益子のスープカップ

関東を代表するやきものの産地と言えば益子ですが、前の職場に勤めていた時代は、愛知以西の窯業地を廻っていたためにあまり縁がありませんでした。現在のように益子に重心を置くようになってからは8年くらい。やきものに携わって17年になる僕の職歴の中では…

金工 小さな工藝

昨日放送のテレビ東京『美の巨人たち』は、幕末~明治期に活躍した伝説の金工家・正阿弥勝義の特集。その技術の極みとも言える『古瓦鳩香炉』を中心に、超絶技巧と称される細かい手わざによって作られた金工作品を紹介していました。 出会った瞬間の驚き、そ…

ドキュメント72時間

”ひとつの場所に3日間。72時間ずっといたら、どんなことに出会えるだろう?人々が行き交う街角の片隅にカメラをすえて定点観測し、3日間の偶然の出会いを記録する「ドキュメント72時間」。同じ時代、同じ空の下に、たまたま居あわせた私たち。みんな、どんな…

印花

僕は、『三島手』という陶芸の加飾技法が好き。以前も、越前の作り手・土本訓寛さん夫妻の三島手の器を紹介したことがあったけれど、現在開催中の展示『Classical Life』では、もう一人の三島手の作り手・池田大介さんの作品も並べています。 土本さんの作品…

酒眉 vol.3

仕事柄、編集出版関係の方々とのお付き合いが多いのですが、昨年末から彼らとともに『酒眉(さけび)』という同人誌を作っています。 タイトルのごとくお酒好きの諸氏が集まっているので、お酒一色の冊子になるかと思いきや、参加者が増えるたびにバラエティ…

十三夜

明日10月25日は、十三夜。 お月見と言えば十五夜が有名だけれど、いにしえの日本人は十五夜(芋名月)と十三夜(栗名月)をセットとして考えていて、両方の月を見ることでお月見が完結したのだとか。 十五夜は中国の風習が伝播したようですが、十三夜につい…

ロマンティック

もう4ヶ月も前のことになりますが、大好きな大貫妙子さんの新しいアルバム『Tint』が発売されました。 前作『UTAU』は坂本龍一さんとのコラボレーションでストイックなイメージだったけれど、今回はバンドネオン奏者・小松亮太さんとのコラボレーションとい…

しめ飾り

現在開催している展覧会『愛媛のてしごと』で、訪れる人の目を惹いているのが、上甲清さんの手になるしめ飾り。 素朴な造形の中にあしらわれた美しい十字状の宝結びは、上甲さんの考案によるオリジナルの意匠なのだそう。たわわに実る稲穂には、『新しい年が…

越前の薪窯

陶芸の産地に関する言葉で、小山富士夫という陶芸研究家が考案した『日本六古窯』という用語があります。これは、中世から現在に至るまで継続して窯業が盛んな六つの地域、備前・丹波・信楽・越前・瀬戸・常滑を指したものです。 その六古窯のうちのひとつ、…

土味

野趣あふれる焼締の五寸鉢。『焼締(やきしめ)』というのは釉薬を掛けずに高温で焼成された器(=炻器)のことで、土ならではのざらっとした触感が特徴。釉薬を掛けていない分、『すっぴんで勝負!』というような感じの潔さがあります。 こちらの器は、越前…

大根

愛媛県の砥部からはるばる届いた竹山窯の銘々皿。染付(呉須絵具による絵付け)ならではの『ダミ』という描画技法を使った、美しい青のグラデーションが特徴です。 絵付けの柄としては珍しいようにも思える大根ですが、実は、昔から縁起のよい紋様として知ら…

秋の日の

夏の強い日差しも過去のものになり、どこか愁いを含んだような西日が、店の奥まで伸びてくる季節になりました。思い起こせば、この夏は伊勢丹での展示をはじめとした諸々の業務のためにこまねずみのごとく動き回っていて、まさに『心を亡くす』ような状況で…

百日紅

店の斜向かいの十字路には百日紅(さるすべり)の木が植えられています。 梅雨明け頃から咲きはじめ、道行く人の目を長いこと楽しませてくれていたのですが、お彼岸を迎えて、さすがにそろそろ散り際。夏の間は、お客様からの電話で店の場所についての問い合…

アールヌーボーのつぼみ

現在開催中の企画展『ワインとおつまみ』。窓辺には、鈴木努さんの手になるロマンティックなミニワイングラスが並んでいます。花のつぼみのような形の酒盃が欲しくて、鈴木さんには、昨夏の展示の折に長いステム(脚)を持つグラスを作ってもらいました。そ…

だるまの土鈴

前回は深大寺にお詣りした話を書いたけれど、今回はそのおまけ。僕は出張などで地方を旅すると、張子とか藁人形とか鳩笛とか、手のひらサイズの郷土玩具をお土産として購入する癖があります。コレクターというほどじゃないけれど。 一昨日参詣した深大寺はだ…

御朱印帳

今年の秋はお彼岸の間に休みが取れないので、お墓参りの予定を前倒し。昨日、ご先祖が眠る多磨霊園に行ってきました。 そして、その帰りにはちょいと足を延ばし、バスに揺られて深大寺まで。こちらには小学校の遠足(神代植物公園と深大寺のセット)で行った…

飛びかんな

8ヶ月待ちで届いた飛びかんなの取皿。『飛びかんな』というのは、民藝陶器として有名な小石原焼(福岡県東峰村)と小鹿田焼(大分県日田市)で多用される装飾技法の名前。 バネを効かせた『かんな』という刃物を器の表面に軽く当てて轆轤を回すと、あら不思…

ちゃんぽんの味

前回の記事に引き続き、2013年の旅の画像を整理していたら出てきた一枚。長崎県波佐見町で撮ったものです。 十数年前、堀江陶器の堀江さんとともに窯元廻りを始めた時に連れて行ってもらった有田屋という食堂で出会ったのが、このちゃんぽんでした。 廃校に…

工人どもが夢の跡

僕が『物作り』の世界(いわゆる工藝)にハマってしまったのは、15年ほど前のこと。長崎県波佐見町の最も古い窯業地区である中尾山のやきもの作りに触れたことがその一因です。それ以来、毎年一回は九州出張に行くけれど、自分自身の仕事の原点である中尾山…

彦山 2013年初夏

年を取ったせいか、最近はわいわいうるさい地上波のTV番組を見ることがめっきり減り、BSの番組を見る時間が増えました。この間もザッピングしていたら、BS朝日の『鉄道・絶景の旅』の再放送にたどりつき、見たことがある風景が出てきたので、懐かしくなって…

童心に帰る

絵本の形をした土井朋子さんのオブジェ。 さまざまな技法を駆使したガラス作品で、ブレーメンの音楽隊のワンシーンを象ったものです。土井さんの手仕事は間違いなく『乙女心』をくすぐるけれど、女性だけではなく、僕のようにいい年をしたオジサンの『親爺心…

血の物語

今月の歌舞伎座公演(八月納涼歌舞伎)はどうしても見たい演目があったので、チケット発売日にしっかりと席を死守。楽日の前日に見に行ってきました。 お目当ては第一部、先ごろ亡くなられた十世坂東三津五郎さんに捧げられた『棒しばり』という舞踊です。狂…

鉛筆で描く

画家のタチアキヒロさんは、かれこれ四半世紀にわたってお付き合いが続く友人。その間、変遷する画風についても、ずっと見続けてきたつもりでおります。陰に日向に。 出会った頃はダークな雰囲気のモノトーンの作品を描いていましたが、ここ数年は水彩絵具を…

ぽっこり ほっこり

庄司千晶さんの手になる作品。 『ぽっこりピッチャー』という名前が付いているところが、言い得て妙。ふとっちょの鳥のごとくユーモラスなたたずまいで、窓辺に置いておいたら、チュンチュンとさえずり出しそう。お酒を注ぐための片口として使ったり、カトラ…

新宿そだち

今月は新宿伊勢丹での2週間にわたる展示が入っていたため、毎日新宿に『出勤する』羽目に。 『【朝】新宿→【昼】神楽坂→【夜】新宿』という生活のルーティンは、若い頃うろついていた懐かしい新宿という街に今一度寄り添う機会を与えてくれました。期せずし…